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排ガス規制(ユーロ5)による絶版ラッシュ

環境基準の進化がバイクの構造に求めた高いハードル

排ガス規制の主な目的は、排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)の排出量を削減することにあります。
ユーロ5では、これまでのユーロ4と比較して、非メタン炭化水素(NMHC)などの項目が新たに追加され、規制値そのものも大幅に引き下げられました。
さらにメーカーを悩ませたのが、排ガスをクリーンにするための「触媒」の大型化と、高度な故障診断装置「OBD2」の搭載義務化です。

バイクは四輪車と異なり、パーツを詰め込むスペースが極めて限られています。
規制をクリアするためにマフラーを巨大化させ、センサー類を増設すれば、当然ながら車重は増え、デザインのバランスも崩れてしまいます。
さらに、空冷エンジンを搭載するモデルにとっては、燃焼温度の管理が難しく、排ガス成分を安定させることが水冷エンジン以上に困難でした。
これらの技術的な課題をクリアするためには莫大な開発コストがかかり、販売価格への転嫁が避けられない状況となったのです。
その結果、メーカーは「コストをかけて継続販売するか、それとも生産を終了するか」という二択を迫られ、多くのモデルが後者を選ばざるを得ませんでした。

惜しまれつつ姿を消した絶版確定モデルの顔ぶれ

この規制の影響を最も象徴的に受けたのが、ホンダの「CB400 Super Four」です。
400ccクラスで唯一の4気筒エンジンを搭載し、教習車としても親しまれてきたこの名車は、規制対応にかかるコストと販売価格のバランスが維持できないとして、2022年に生産終了を迎えました。
長年愛されてきた「ボルドール」も含め、新車で買えなくなった衝撃は大きく、発表直後から中古車市場では新車価格を大きく上回るプレミア価格で取引される事態となりました。

また、ヤマハの「SR400」や「セロー250」といった、空冷エンジンの鼓動感を楽しめるロングセラーモデルも、この規制の壁を越えることができませんでした。
SR400は43年という長い歴史に幕を閉じましたが、ファイナルエディションの争奪戦は記憶に新しく、現在でも低走行車は驚くほど高値で推移しています。
他にもスズキの「GSX250R(旧型)」や「Vストローム250(旧型)」など、多くの人気車種が一旦ラインナップから消える、あるいは大規模な仕様変更を余儀なくされました。
これら「最後のアナログ感」を残したバイクたちが市場から消えていくことが、中古車価格の高騰をさらに加速させたのです。

過熱する中古市場の動向とこれからの相場予想

現在のバイク市場は、ユーロ5対応を機に「新車の高価格化」が進んでいます。
規制をクリアした最新モデルは、電子制御スロットルや高度なセンサーを搭載するため、以前のモデルよりも1割から2割ほど定価が上昇する傾向にあります。
この新車価格の上昇が、中古車相場を下支えする形となり、かつての「中古=安い」という常識が通用しにくくなっています。

今後の相場については、空冷エンジンの絶版車や、400cc以下の多気筒モデルについては、今後も値下がりする要因がほとんど見当たりません。
すでに「ユーロ5+(プラス)」というさらに厳しい次の規制も始まっており、今後はOBD2の性能強化や、触媒の劣化を常時監視する仕組みが義務付けられます。
これにより、さらに構造が複雑化し、修理コストも増大していくことが予想されます。
そのため、比較的シンプルな構造で維持しやすい「ユーロ4以前」のモデルや、名車と呼ばれた絶版車は、今後「資産」としての価値をより強めていくでしょう。
もし気になっている絶版モデルがあるのなら、これ以上個体数が減り、価格が上昇する前に、信頼できるショップで程度の良い車両を確保しておくのが賢明な判断と言えそうです。